会社設立前に知っておくべきこと
知らないと損をする!?会社設立前にこれだけはチェック!
会社を作ったら、国からお金がもらえる?
本当です。まさに脱サラ起業支援といえるもので、「受給資格者創業支援助成金(自立就業支援助成金)」といいます。
助成金とはなんでしょうか?それは国からいただける、返す必要のないお金です。
この助成金の対象として、自己の事業のために必要な訓練や、会社を作るために要した費用や専門家コンサルタントに支払った報酬(例えば当事務所に支払った報酬)、労働者雇用のために策定する就業規則などに要する費用、その他法人に発生した費用であり、その3分の1、最高200万円までがもらえます。
要件として5年以上の雇用保険受給資格者が自ら出資し、会社を設立、そしてその会社の代表者となる必要、そして創業1年以内に従業員を雇い入れる、などの要件を満たした方が会社設立後も継続して支給申請をすることになります。
ここで忘れてはならないのが、助成金を受けられる対象となる領収書等をきちんと保管しているか、また最初の届出はいつまでに行うのか、ということです。
無料や2.980円など極めて定額かつ大量の案件をこなす会社設立業者の多くはこの部分について対応がなく、会社設立後、それを知ったお客様から助成金についてのお問い合わせを受けてしまうことが多いようです。
まず「受給資格者創業支援助成金(自立就業支援助成金)」を受給するには会社設立登記「前」、ひいては開業準備行為前までに、労働局へ法人等設立事前届を済まさなければなりません。会社の設立登記をしてしまっては、もう手遅れです。というのは、この助成金、会社を辞めて新しく職を探しているが、その職探しすらうまくいかず、最後の手段として創業することにした、というストーリーの準備が必要なのです。
必ずこの助成金については会社設立前に確認してください。なにせ会社設立に要した費用が国からキャッシュバックされるのですから、利用しない手はありません。
あなたの業種に許認可は必要ですか?
無事に会社ができました。そうだとしても、実際に営業をするには種々様々な許認可が必要になります。
くせものなのが、この許認可。行政庁に対し「こんなことやりますよー」とただ報告すればいいものではありません。資本金はいくら以上必要、事業所の設備、状態はどうだ、役員やスタッフはどんな人だ、また会社設立に際し作成した「定款」の事業目的の記載が許認可を必要とする業種の「役所規定の文言」と一致しているか、など厳しい審査の入るものがあります。
場合によっては、会社は作ったけど営業ができない。そのために会社を一部作り変えなきゃいけない、という問題がでます。これには税金や専門家報酬を含め、更に出費がかさみます。このような出費は避けたいものです。
きちんとご自身の事業目的(現在だけでなく将来にわたって)を把握し、必要な許認可を知る必要があります。
なお許認可を必要とする事業を始めるにあたって、銀行や日本政策金融公庫などから資金調達を行なう場合、融資の相談に先立ってきちんと許認可を取得する必要があります。
以下に許認可を必要とする代表的な業種を記載します。それに必要な許認可の種類を見て、Google等で調べれば、許認可の概要がわかると思います。そして、各種許認可に対応する行政機関の窓口やホームページ、配布手引きなどで詳細を知ることができます。
実際に許認可取得手続をする時間のない方は、当事務所など専門家にご相談下さい。
許認可を要する代表的な業種とそれに対応する主な機関 | ||
業種 | 許認可 | 主要機関 |
建設業 | 建設業許可 | 都道府県庁 |
解体工事業 | 解体工事業登録 | 都道府県庁 |
不動産業 | 宅地建物取引業免許 | 都道府県庁 |
貸切バス業 | 一般貸切旅客自動車運送事業経営許可 | 運輸局 |
タクシー業 | 一般乗用旅客自動車運送事業経営許可 | 運輸局 |
自動車分解整備業 | 自動車分解整備事業認証 | 運輸局 |
トラック運送業 | 一般貨物自動車運送事業経営許可 | 運輸局 |
産業廃棄物処理業 | 産業廃棄物収集運搬業(処分業)許可 | 都道府県 |
倉庫業 | 倉庫業登録 | 運輸局 |
レンタカー業 | 自家用自動車有償貸渡許可 | 運輸局 |
旅行業 | 旅行業登録 | 都道府県庁 |
旅行代理業 | 旅行業者代理業登録 | 都道府県庁 |
旅館・ホテル業 | 旅館業営業許可 | 保健所 |
食品製造業 | 食品製造業許可 | 保健所 |
飲食店 | 飲食店営業許可 | 保健所 |
酒屋 | 酒類販売業免許 | 税務署 |
タバコ販売 | 製造タバコ小売販売業許可 | JT |
深夜営業飲み屋 | 深夜酒類提供飲食店営業営業開始届出 | 警察署 |
キャバクラ・接客飲食店 | 風俗営業許可 | 警察署 |
ダンスホール | 風俗営業許可 | 警察署 |
パチンコ・麻雀・ゲームセンター | 風俗営業許可 | 警察署 |
性風俗店 | 性風俗特殊営業営業開始届出 | 警察署 |
骨董・中古・リサイクル店 | 古物商許可 | 警察署 |
貸金業 | 貸金業登録 | 都道府県庁 |
介護事業 | 介護事業指定 | 都道府県庁 |
薬局・医薬品販売業 | 薬局・医薬品販売業許可 | 都道府県庁 |
化粧品製造・販売(自社製品) | 化粧品製造販売許可 | 都道府県庁 |
医療器具販売業 | 医療器具販売許可 | 都道府県庁 |
人材派遣業 | 一般(特定)労働者派遣業許可(届出) | 労働局 |
職業紹介業 | 有料職業紹介事業許可 | 労働局 |
床屋・美容院 | 理容所(美容所)開設届出 | 保健所 |
クリーニング業 | クリーニング所開設届出 | 保健所 |
警備業 | 警備業認定 | 警察署 |
探偵業 | 探偵業届出 | 警察署 |
上手に節税のできる状態ですか?
会社法が施行されてから随分と時が経ち、新体制における会社作りはある程度浸透しているのが現状です。ただし、会社設立業務の現場において、例えば役員や資本金、株式の定め方、事業年度などについて旧制度での値や慣習を、基準や平均として採用するケースが目立ちます。
しかし、上手に会社を作るには、会社法以外の法律(各種許認可に関わる法令や税法等)に気を配る必要も出てきます。事業を始めたばかりの頃は、抑えられるコストはできる限り抑えたいものです。
例えば「旅行業登録」「一般労働者派遣事業」など営業許可において必要な純資産、資本金要件がある場合、その他特別の場合を除いて、資本金は1000万円未満で定めるようにしたほうがよいでしょう。
また、事業年度は設立時を期首とし期末までの期間を十分にとれるよう定めてください。なぜなら1.資本金1000万円未満の会社は、設立から1期目までの事業年度は課税売上高にかかる消費税の免税事業者になる、2.2期目については、前年度(1期目)の期首から半年間(つまり創業直後半年間のこと)の課税売上高が1000万円以下の場合、消費税の免税事業者になる、からです。
ただし例外があり、創業後1、2年以内に大きな設備投資をする事業者は、消費税納税事業者であることによって、その分税金の還付が受けられます。上と損得が逆転してしまうので、ご注意下さい。
また、多くの方が会社設立登記までは行えど、そこで安心してしまうのか、営業に打ち込むあまり忘れがちになってしまうのか、税務署への届出を怠るケースがあります。この届出の期間はきわめて短く、知らないがために税控除が受けられなくなることがあります。
改めて資本金額の定め方ですが、1000万円未満がいいとはいえ、低すぎる値というのはできる限り避けたいものです。なぜなら、金融機関からの融資が必要なとき、低すぎる資本金の会社は信用されにくい傾向にあるからです。
資本金は1000万円未満の範囲で「開業資金+運転資金6ヵ月分」を参考になさってください。
会社設立後の手続きについては、「会社設立直後に必要な手続」の欄で詳しく説明します。
会社設立直後に必要な手続
会社ができただけでは不十分。確認したいその他の手続
法務局
会社設立から1週間ほど経過したでしょうか。会社の記録がきちんと登記に記載され、対外的にも会社の設立を証明できるようになった頃、なつかしの法務局に戻ります。
ここで、先日出した印鑑届出書が印鑑カードになっておりますので、それを取りに行きます。今後様々な手続で必要となる会社代表者印の印鑑証明書がカードで簡単に発給できるようになります。まずはこのカードを利用して3つほど印鑑証明書を取得しましょう。後の手続で必要になります。
なお、手ぶらでは行かず、必ず会社代表者印だけは持参してください。
また同じ法務局内で自己の会社の登記事項証明書を、こちらも3つほど取得しましょう。
なお、印鑑カードおよび登記事項証明書取得の手続きについては、簡単な申請書が窓口に置いてますので、そちらに記入して取得することになります。今回はなにも複雑なことはありません。
法人名義の銀行口座の開設
登記事項証明書を法務局からもらったら、まずは銀行に行きましょう。
どこの銀行に口座を持つのか、ということは、今後の銀行との融資相談や、取引先の信用等、多くの事柄に関わってまいります。
メインやサブなどいくつかの銀行と取引をすることになると思います。会社設立直後はどなたも小さな会社であると思います。そのような会社はメガバンクに口座を開くことはできても、融資相談については高いハードルがあります。
メガであっても、自己の会社を気にかけてくれる銀行はどこか。営業マンの動きはどうか。また、地方銀行や信金など地域密着で中小企業を成長させることを使命とする金融機関との付き合い方も考え、口座を開く際には、融資の相談もきちんとできる、長く付き合っていきたい金融機関を選ぶべきです。ただなんとなく選ぶことだけは絶対に避けましょう。口座の数もメインだけでなく、サブ行も視野に入れて開設しましょう。
また口座開設手続は、会社という法人の本人証明に要する書面が多いだけで、個人での口座開設手続と大きく変わるところはございません。ただし、今後長く銀行と付き合いを続けていく、最初の出会いの場でもあります。差し出がましいかもしれませんが、社長自身が銀行に行き、会社代表者としての自覚を持った上で銀行員と対面し、口座開設の手続をすべきです。
法人口座開設手続で必要となるものとして、
・登記事項証明書
・定款
・会社代表者印の印鑑証明書
・会社代表者印
・銀行印
・本人確認書類
がございます。ただし、銀行ごとに必要な書類は異なりますので、正確な内容は実際に銀行までお問い合わせ下さい。
税務署
会社の本店を管轄する税務署に行きます。管轄はこちらをご確認ください。税務署の管轄
なお、提出期間に限りがありますので、ご注意ください。
以下届出書、申請書は各税務署窓口にございます。記入自体難しいものではありませんが、内容によって節税対策などに影響してまいります。顧問となる専門家に相談するとよいでしょう。当事務所でも承っております。
1、法人設立届(提出期限会社設立後2ヵ月以内)
・添付書面
登記事項証明書
定款(コピー)
その他、添付書面は各税務署によって異なりますので、直接窓口へご確認下さい。
2、青色申告の承認申請書(提出期限会社設立後3ヵ月以内または事業年度終了前)
3、給与支払事務所等の開設届出書(当該事務所を設けてから1ヶ月以内)
・給与の支払を受ける者には、もちろん社長も含まれます。
4、源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書(該当する場合のみ必要)
・今後、給与支払時に差し引く源泉徴収分を税務署まで納めることになります。その作業を1ヶ月毎ではなく、半年毎とするにはこの申請をする必要があります。なお申請できるのは常勤の給与受給者が10人以内の会社のみです。
5、棚卸資産の評価方法の届出書(確定申告まで。該当する場合のみ必要)
・免税事業者とならない場合に届出る必要があります。顧問となる専門家に相談するとよいかもしれません。
6、原価償却資産の償却方法の届出書(確定申告まで。該当する場合のみ必要)
・免税事業者とならない場合に届出る必要があります。顧問となる専門家に相談するとよいかもしれません。
以上の書類を窓口にて記入し提出する場合、各々コピーをとって、手元に置いておくようにしてください。なお、コピーは「コピー下さい」と窓口の方に言えば、コピーをとってきてくれますよ。
都税事務所または市町村役場
税務署で記載した法人設立届と同じ内容のものを、東京都23区内に本店がある場合は都税事務所へ、それ以外の場合は本店のある市町村役場へ提出します。
なお、税務署で記入した法人設立届がカーボン複写式の場合は、その複写をそのまま提出して構いません。そうでない場合は、税務署にてもう1通書いてしまいましょう。
最後に、税務署と都税事務所は別々の組織です。23区内の方向けにこちらをご覧ください。都税事務所の場所
労働基準監督署・ハローワーク(公共職業安定所)
雇用保険・労災保険への加入を行ないます。従業員のいない場合には加入する必要はありません。こちらについても、加入の有無から必要な許認可の取得や更新に影響することがあります。
雇用保険・労災保険加入申請の提出期限は、雇用から10以内と非常に短いので注意が必要です(ただし、多分に大目に見てもらえますが)。
なお、雇用保険・労災保険の支払いは一年分先払いの方法で致します。そして、一年後、追加納付なり還付なりが行なわれる仕組みになっております。
一年分先払いではございますが、雇用保険・労災保険の負担額は非常に低く、資金に余裕の無い時期である事業開始時は同時に従業員も少ないときでしょうから、必ず加入するようにした方が良いでしょう。労災保険について会社のメリットはとても大きいものです。
参考として、就業規則の作成は従業員10名以上から義務となります。ただの従業員の就労規則と甘く見てはいけないのが、就業規則の作成の仕方しだいでは助成金を受けることができます。書店やインターネットにある雛形では助成金などの特殊要件まで満たす雛形はないでしょう。
また、就業規則の中で労働関係に限らず、例えば著作権関係など様々な権利関係を会社と従業員の間の約束事として定めることができます。
手続につき、例外や独自の最適な適用方法が多くありますので、ここでの説明を割愛いたします。
是非とも社会保険労務士や行政書士などの専門家に作成を依頼したほうがよいでしょう。
年金事務所
健康保険と厚生年金への加入手続きを行ないます。例え従業員のいない、社長だけの1人会社であっても加入義務があります。
現実では加入のないケースが多くありますが、こうした義務手続を欠くことで各種許認可の取得や更新ができないことがありますのでご注意ください。
また事業を行なっていく上で、国や市区町村レベルで多くの助成金を獲得できるチャンスがあります。それら助成金の受給資格自体得られなくなりますので、健康保険、厚生年金には加入すべきでしょう。健康保険と厚生年金は従業員一人当たりにつき、それなりの負担額となるので、躊躇する方が多いです。しかし、メリットについて正しい知識を持ちながら、加入を検討してみてください。
最後に、許認可を要する事業を行なう方には、その事業者団体独自の保険に加入することができます。その場合は通常の保険額に比べ、安い額で保険の適用を受けることもできます。
手続につき、例外や独自の最適な適用方法が多くありますので、ここでの説明を割愛いたします。
ご質問がある場合は、社会保険事務所や各事業者団体、社会保険労務士や行政書士、税理士など専門家にご相談なさるのがよいでしょう。
市区町村レベルでも多くの小規模事業者向けの共済保険がございます。小規模企業保護の目的で税金によってまかなわれているため、解約時全額返金ながら、多くのリスクに備えられます。よって会社のリスク管理や節税対策のためにも、是非とも活用されるのがよいでしょう。
なお、会社名義の銀行口座が開かれていないと、手続きが出来ません。健康保険、厚生年金の支払い引き落としは毎月ごとに行なわれます。